久万山御用木まつりの由来

- 「林業の町らしさ」を求めて始まった、久万高原の熱い夏まつり -

■御用木まつりの始まり

昭和58年に、町村合併前の旧久万町の商工会青年部、農業後継者連絡協議会、青年団が一緒に交流する機会を持とうということで久万町青年協議会という組織ができ、その中で、久万高原らしい「祭り」をつくろうという話になりました。そんな時、当時の町誌に「山の神祭り」という記事が出ており、慶長7年(1602年)松山城を加藤嘉明(1563~1631年)が築城した際に、畑野川地区にあった松山藩の藩有林から、天守閣などの建築のための材木が、お清めされて運ばれていたという事実が分かりました。その史実を参考にして、林業の町にふさわしく、お祓いをしていただいた丸太を担いで走るタイムレースをしてはどうかということになり、そこから「久万山御用木まつり」が始まりました。現在では、開催も40回を数え、久万納涼まつりのメインイベントとして、8月の第1土曜日に、多数の観客が見守る中、盛大に実施されています。

 

■剛力と健脚自慢が競う、ハードなレース「御用木かき比べ」

御用木

「御用木かき比べ」に使う男性用の丸太は、赤い鬼皮(おにがわ)(樹木の最も外側の樹皮)を残し、末口の直径17cm以上、長さ7m、重さ約200kgにもなります。女性用は、鬼皮をはいだ状態で、末口の直径7cm以上、長さ5m、重さ50kgとなっており、男性用に比べるとやや小ぶりとなっています。丸太の前の切り口には『御用木』という高札を打ちつけ、しめ縄や御幣を付けてお飾りをします(右写真)。切り出した木材の根本の方を元口(もとぐち)、先端の方を末口(すえぐち)と言いますが、担いで走る時は、元口を前にします。

御用木まつりの運営は、世話役会が担っており、町長が代表である元締(もとじめ)を務め、その下で代表世話役が実行委員長的な役割を担います。かき比べに出場するチームは、御用木についている紅白のひもを引っ張り先導する「若衆」が1人、丸太をかく「荒(あら)し子」が10人(女性は5人)、そしてチームの代表者である組頭で構成されます。レースは、1チームごとに行い、スタートラインに置いてある御用木を、大太鼓の合図によって一斉にかきあげて走り出し、約400m先のゴール(役場前駐車場)を目指して走り抜け、そのタイムを競い合います。レースのルートとなる商店街の沿道には、所々にお清めの水を満たした桶(おけ)を置き、10代の清女たちが、走ってくる荒し子たちにひしゃくを使って威勢よく水を掛けます。荒し子たちにかかった水は湯気となって舞い上がり、レースはクライマックスを迎えます。ゴールした荒し子たちは疲労困ぱいで、その場で倒れこむ人たちも見受けられますが、その顔は皆清々しく、やり切った爽快感であふれているようです。

すべてのチームがゴールした後、一番早いチームを一番柱とし、以下二番柱、三番柱、四番柱まで順位が付けられ、それぞれ順位を呼ばれたら、特設の櫓(やぐら)まで丸太を担いでいき、柱立(はしらだ)てをして、元締から表彰を受けます。当初、使用する御用木は、地元の篤林家から無節の優良な桧の通し柱を提供してもらっていました。しかし、参加するチーム数が増加したため、現在は、町の林研グループに提供してもらった杉の丸太を使用しています。

水かけ かき比べのようす

 

ゴール 賞金

 


■まつりに欠かせない林家の力について

御用めきき木まつりには、御用木を提供していただく林家の皆様の、熟練した育林作業と、伐採前に優良無節材を見分ける「目利き」の力が欠かせません。枝打ちの跡に、セミが留まっているように皮が浮いている「セミ留(と)まり」いうこぶができていれば節は出てきませんが、優良無節材をつくるためには、植林後3年間ほどの下草狩りに加え、樹高が3mくらいとなる5年目ころから継続して枝打ちを行うなど、上浮穴地方育林技術体系に沿った多くの作業が必要となります。御用木に使用する杉には、樹齢約50年の優良無節材をご提供いただいており、林家の皆様の隠れた力があってこそのまつりとなっています。


■まつりの移り変わり

当初の御用木かき比べは、まちづくりに燃える熱心な若者たちが中心となり、町内の各地域から15組くらいのチームの参加がありましたが、高齢化などの影響もあり、最近は、陸上競技やトライアスロンの愛好者による町外のチームが増加してきました。また、当初は、黒い腹掛けに股引き、足元は地下足袋といった揃いの衣装でしたが、最近は走りやすい服装に、肩当てやゴーグルを着用するなど様変わりをしてきました。


■御神木の登場

還暦丸太

平成6年には、さらに趣向を凝らして、台車に乗せた樹齢100年を超える御神木を引っ張ってゴールを目指す、厄除丸太(厄年対象)や還暦丸太の運行が始まりました。これらのスタート前には、三島神社の宮司によって霊験あらたかな厄除け祈願の神事が営まれ、町外に暮らす多くの町出身者も加わって、さながら同窓会のように盛大に運行されています。

平成10年には、旧久万町の四つの中学校が統合する記念として、直瀬の五社神社にあった樹齢380年の木を特別な台車に乗せ、御神木として中学校の生徒や保護者が引きました。また、近年は、松山市を中心とした町内出身者で構成する「久万同郷会」の皆様による御神木も運行されています。

開催時期 8月第1土曜日(雨天順延)